大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和56年(ラ)24号 決定 1981年2月17日

抗告人

新田建設株式会社

右代表者

新田利幸

主文

本件抗告を却下する。

理由

一本件記録によれば、抗告人は、昭和五六年一月一二日、東京地方裁判所が前文掲記の事件につき同月九日にした決定の送達を受け、同月一七日当裁判所に対し、本件抗告状を提出したことが認められる。

二ところで、民事執行法一〇条二項は、執行抗告は抗告状を原裁判所に提出して提起しなければならない旨規定し、抗告裁判所に直接抗告状を提出することを認めていない。そして、同項が、同条の他の規定と相まつて、同法施行前において強制執行及び任意競売手続における決定に対する抗告が、多くは、右手続の進行を遅延させることを目的として提起されたことに鑑み、かかる事態を阻止するために設けられたことに照らせば、抗告状が抗告裁判所に直接提出された場合、民事訴訟法三〇条一項を類推適用し、当該抗告を原裁判所に移送することは許されないものと解すべきである。けだし、右移送を認めるときは、前記目的のためにする抗告を誘発し、民事執行法一〇条の立法目的を損うことになるからであるのみならず、原裁判所及び関係当事者が原裁判の確定及びその時期を知ることを困難ならしめ、法的安定性を損うおそれがあるからである。

以上のとおりであるから、本件抗告は不適法として却下すべきものである。

よつて、主文のとおり決定する。

(園田治 菊池信男 柴田保幸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例